
東京都港区の東芝本社が入るビル【拡大】
東芝は、半導体事業を分社して設立する新会社の株式について過半数の売却を検討する方針を示した。今年3月末の債務超過を解消するために、経営権にこだわらない条件を示してでも売却を確実にする必要に迫られているといえそうだ。
東芝はこれまで主導権を維持するため20%未満の株式売却にとどめると説明していた。一転した背景には出資交渉の難航がある。
2月上旬から海外の半導体大手や投資ファンドとの交渉に入ったが、過小出資は魅力が乏しく、条件変更を求める声が強かった。金融機関から経営立て直しには20%未満では不十分と指摘もあった。
3月末の債務超過を免れたとしても、自己資金は極めて薄く危機的状況に変わりはない。今後、金融機関の支援に頼らざるを得ないことも踏まえ、一段の自助努力を示したともいえる。
だが、財務危機をしのぐ代わりに成長の柱を失うことになる。原発事業も米国と英国の子会社株式の売却などを進め、海外中心に縮小する方向も示した。綱川智社長は「社会インフラの比重を増やしていきたい」と語るが、再建に向けた戦略は描きにくくなった。