■クラフトバンドの使徒 愛好者の心掴む
□松田裕美 エムズファクトリー代表取締役社長
手芸で使う紙紐クラフトバンドのネット販売事業を7万円からスタート。年商6億円の企業を築き、クラフトバンド手芸を芸術的レベルにまで引き上げた。「社内で私が一番楽しんでるかも。生きてる!って実感して」
先天的内臓疾患の手術、家族との別離、勤務先でのいじめ…。10代でさまざまな経験に耐え、20歳を迎えて長崎から東京へ。良き伴侶との出会いで主婦として安らぎある暮らしを知った。
転機は15年前、住まいの神奈川・茅ヶ崎で訪れた。子供の学校の保護者会で参加した手芸教室。クラフトバンドを使う籠編みに出合い、夢中に。義母や近所に贈ると手作りのぬくもりに感謝される。主婦仲間に請われ、編み方を教え始め、程なく転居した千葉・一宮町でも、保育園のママ友相手に教室を開いた。
材料を取り寄せ、深夜まで材料をカットしロール状に巻き取り…。参加者の笑顔がうれしくて独りで準備するが無償行為にも限りがある。近くの病院から作品の注文話が舞い込むなどの人気を見て、決めた。「クラフトバンド販売をビジネスにしよう」
静岡まで出掛けて生産者との直取引の談判に成功。「一宮町で月に何万円も売れるならよそでも売れる」とネット販売に思い至る。手元には7万円。4万円は仕入れに使い、近所のパソコン教室講師に「3万円で私のホームページをつくって」と依頼。蓋を開ければ、販売初日だけで7万円分売れた。