【被災地へ 石油列車】幻に終わった北上線構想 奥羽山脈が壁、後に生きた下準備 (3/3ページ)

2017.5.1 05:00

機材調達を担ったJR貨物の松田佳久さん
機材調達を担ったJR貨物の松田佳久さん【拡大】

 史上最長の1030キロ

 北上線構想と同時並行で、日本海縦貫で青森まで北上し、そこからUターンして盛岡を目指すルートも検討されていた。青森から八戸までの「青い森鉄道」、八戸から盛岡までは「IGRいわて銀河鉄道」と、第三セクターが管理する線路を借りることになるが、このルートなら電気機関車が使える。ただ、震災後の混乱や慢性的な人手不足も影響し、各三セクからは線路の被害状況などの情報がなかなか送られてこない。修繕に時間がかかるようなら、諦めざるをえない。

 行程の長さも問題だ。石油列車の走行距離は長くても200キロ程度だ。仮に製油所の集中する根岸(横浜市)を出発点とすると盛岡まで、青森経由だとおよそ1030キロ。鉄道貨物の歴史上、こんな長距離の石油輸送は前例がない。安田さんはなかなか決心ができずにいた。

 そんな折、三セク側から線路の損傷がほぼなく、走行に支障なしとの連絡が入った。経路の長さは、運転士をこまめに交代させることで対応する。「よし、北上線はなし。青森経由で盛岡まで走らせよう」。安田さんが号令を出した。3月16日だった。

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