【変わる働き方】(1)残業規制、本質は業務効率化 (2/4ページ)

2017.5.3 05:00

 ◆「一生懸命を否定」

 電通の新入社員、高橋まつり=当時(24)=の過労死事件を機に、「働き方改革」は長時間勤務や過剰な残業の是正を求める社会的な風潮となった。だが、身を粉にして働いた「モーレツ社員」の完全否定に首をかしげる人もいる。60年に三洋電機(現・パナソニック)に、入社した熱田親憙(ちかよし)(80)=大阪府寝屋川市=もその一人だ。

 「一生懸命働くことが否定され、自分が社会に貢献しているという手応えを失ってしまわないだろうか」

 84年、三洋は1人暮らしを始める大学生や社会人を対象に、小型で低価格な家電シリーズを売り出した。後に藍色のロゴが有名になった「it’s(イッツ)」だ。

 「新しいことをやるときは楽しかった。ロマンだね。業界にムーブメントが起きて、押せ押せムード。売れに売れた」。当初、藍色を使った“白物家電”は社内でも議論を呼んだ。「どうしたら説得できるか、血みどろに24時間考え続けた」という。

 夜の8時や9時から会議が始まることはザラだった。若者の声を聞くため毎週金曜日、大阪から東京・六本木の盛り場に通った。「耳をそばだてながら、彼らがどういう生活をしているかリサーチするため」だった。

 こうした経験から元モーレツ社員は言う。

 「残業規制は二の次ではないか。自ら仕事をつくってモチベーションが上がれば、忙しくてもストレスにはならない。猛烈に打ち込む仕事の否定までしてほしくない」

 オフィスビルから夜のともしびが消える風景が珍しくなくなってきた。

 東京都庁では午後8時を過ぎると、照明は15分ごとに自動で消える。小池百合子の知事就任後、昨年10月から8時の「完全退庁」を目指しているからだ。

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