◆17時退社でも増収
残業を抑制し、仕事を持ち帰らず、なおかつ業績を伸ばし続けることは可能なのか。
化粧品開発・販売のランクアップ(東京都中央区)は、「業務が終われば30分早く帰っていい」というルールの下、約50人の社員ほぼ全員が午後5時に退社する。にもかかわらず、創業から10年連続の増収を果たした。秘訣(ひけつ)は徹底した業務の可視化と選別だ。
同社では、社員が業務時間や内容を表に書き出す作業を行っている。社員一人一人の業務を会社が把握し、会社の成長に不要な業務は思い切ってやめる。入力作業はシステム化するなど、定期的な見直しを行い、業務過多をなくす取り組みを継続してきた。鍵となるのは仕事の効率化を徹底し、社員の生産性をいかに高めるかだ。
「働く者にとって、残業をした方が楽なことが多い。だが、少しでも許すと『残業よし』とする空気に支配される。常に『必要な業務は何か』を見直し続けることが大切だ」。社長の岩崎裕美子(49)はこう話す。
日本生産性本部生産性研究センター主席研究員の木内康裕は「日本は社内調整に時間をかけて会議が多いなど、無駄なことがまだまだある」と指摘する。健康や人の生命と、経済成長とをはかりにかける働き方が当たり前であってはならない。無駄を省き、必要な所に働く人の力を集中する。仕事の“本質”の見極めが今、問われている。(敬称略)
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「1億総活躍社会」の実現に向けて、政府は働き方改革の実行計画をまとめた。日本の働き方における大きな転換点となるのか。改革の行方と課題を探る。