苦節30年で鉄道黒字 JR貨物、復活の原動力は「プロ経営者」の改革 (3/4ページ)

2017.5.14 13:10

東北本線を走るコンテナ列車。牽引するEH500形電気機関車は直流・交流区間とも走行可能で、2両をつなげた強力なパワーから「平成のマンモス」と異名を取る
東北本線を走るコンテナ列車。牽引するEH500形電気機関車は直流・交流区間とも走行可能で、2両をつなげた強力なパワーから「平成のマンモス」と異名を取る【拡大】

  • EF210型電気機関車が牽引する貨物列車。JR貨物が発足後初めて新製した電気機関車で、直流区間の主役だ
  • JR貨物の「環境に優しい」ハイブリッドディーゼル機関車HD300形。エンジンで発電し、ブレーキ作動時の回生電力も活用してモーターを駆動させる仕組みだ。2011年から貨物駅構内での入換作業で活躍している
  • 長大編成をくねらせて走る貨物列車。軌道を改良した東海道・山陽本線などでは最長26両、最大1300トンの列車が走る

 たとえば、JR貨物が走らせている列車ごとの収支データを全国の各現場に毎日配信し、情報共有する仕組みを導入した。その上で、貨物の積載率が往路・復路や曜日によって偏っているならば、“空気を運ぶ”より運賃をディスカウントしてでも荷物を集める-。そうした柔軟な運賃設定の権限と収支確保の責任を、全国6支社に委譲した。

 また、花形の運輸部門と比べて弱体だった営業部門を強化するため、即戦力となる営業マン数十人を中途採用し、営業戦略と列車ダイヤの設定を一元的に担う新部署もつくった。

 その結果として実現したのが、平日と比べ空荷が多い日曜の列車を使う「イオン号」であり、大阪行きと比べ空荷が多かった金沢行きの列車を使うアサヒ・キリンの共同輸送だ。

 一連の改革について、同社関係者は「民間の物流会社なら当たり前の施策かもしれない。従来は国鉄の感覚を引きずった『内向き思考』が強く、民間会社になりきれていなかった」と評価する。

 石田会長は「鉄道黒字化の直接要因は、徹底した計数管理だ。しかしそれ以上に、『俺たち自身がやらなくては』という意識を全社員で共有できたことが大きい」と満足げに語る。

各業界の苦境で潮目変わったJR貨物、しかし火種も

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