
船余りによる世界的な受注低迷で厳しい状況が続く造船業界=津市【拡大】
■相次ぐ巨額損失 雇用維持も懸念
造船業界を取り巻く環境は厳しい。日本船舶輸出組合によると、国内造船大手の受注量を示す2016年度の「輸出船受注量」は約479万総トン。排ガス規制強化に伴う駆け込み需要の反動があるとはいえ、前年度の4分の1以下に落ち込み、リーマン・ショック後の09年度も下回った。
重工各社はここ数年、海洋資源開発分野へ進出し、技術力を生かせるLNG船などの受注拡大に力を入れてきた。しかし、原油安で資源開発は停滞し、そのあおりを受けて船舶需要まで落ち込んでしまった。しかも、ライバルの中国・韓国勢は安値攻勢を続けており、日本勢は低価格競争に苦しんでいる。
各社が改革に踏み切る背景には、巨額の損失を出したこともある。三菱重工は受注した2隻の豪華客船建造が遅れ、累計2742億円の損失を計上。結局、大型客船建造から撤退した。川崎重工は、ブラジルの合弁会社で海底油田の掘削船を建造したものの、顧客が実質的に経営破綻して代金回収が滞った。IHIもシンガポール向け掘削船の船体などで建造工事が遅れ、巨額の損失計上を余儀なくされた。収益を確保しようと、難易度の高い分野に無理して挑んだ結果、かえって損失が膨らんだ面は否めない。