
磐越西線ルートで活躍したディーゼル機関車DD51(日本石油輸送提供)【拡大】
そこへ1枚の写真が届く。東北本線の黒磯駅と新白河駅の間の地点。一同息をのんだ。「はしごじゃないか…」。盛り土や枕木が流され、線路が宙に浮いた状態をはしごという。地震の激しい揺れで、広範囲にわたり土砂が流出し、はしごとなっていた。補修には長い時間が必要だ。間に合わない。
「磐越西線しかないな」。だれかがつぶやく。運用チームは「機材も集まらないだろうし、運転士の再教育も必要だ」と結論を先延ばしすべきだとの立場をくずさない。松田さんが口を挟む。「DD51、8両集まります。メンテナンスは東新潟で。貨車はタキ1000を使用するので入線確認を取りましょう」。運用チームから怒声が上がった。「機材だけで走れるのか。お前らばっかりいいかっこすんな」。実際、磐越西線を石油列車が走るリスクは大きい。慎重に検討すべきだ。部署間の言い争いはしばらく収まらなかった。被災地に石油を送りたい、その気持ちに優劣がつくような気がしたのかもしれない。
「磐越西線を使う。できるだけ早く、届けよう」。安田さんが決断した。