【被災地へ 石油列車】「時代遅れ」のディーゼル機関車に脚光 10年前のメモ片手に走行 (2/2ページ)

2017.6.26 06:03

磐梯町付近は磐越西線の「難所」(日本石油輸送提供)
磐梯町付近は磐越西線の「難所」(日本石油輸送提供)【拡大】

 郡山の運転士4人のうち、中村さんはDD51の乗車経験がなく、講習では苦労したという。ただ、残る3人の運転士はDD51にしばらく触っていないとはいえ十分なキャリアを積んでいる。「10分で思い出した」(渡辺さん)。

 磐越西線ルートでの石油列車の初便は3月26日に決まった。初便の運転士に指名された遠藤さんは一足早く郡山に戻った。すでに線路の補修は完了しており、タンク貨車タキ1000の入線確認も、JR東日本仙台保線技術センターの尽力もあり、わずか3日で完了していた。25日には実際に短い旅客車を引いた機関車で磐越西線の確認走行が行われた。

 自作のメモ片手に

 車両には遠藤さんのほか、信号や保線の専門家など15、16人が搭乗し、会津若松から郡山まで踏切ごとに止まりながら時速25キロで走行。遠藤さんは勾配の確認やアクセル(ノッチ)やブレーキをかける目標物を確認しながら、走行イメージを膨らませていく。「ディーゼル機関車は惰性で走らないからこまめにノッチを開ける」。手には十年以上前に磐越西線を走ったときの自作のメモが握られていた。こうした路線や機関車の特長を列挙したメモは「あんちょこ」とも呼ばれ、運転士の財産の一つだ。

 磐梯町から翁島の間、勾配が増し急カーブが迫る。谷のような地形で、冬場は雪がふきだまる。以前、遠藤さんが運転した旅客車両が動けなくなった地点もこの辺りだ。いやな記憶がよみがえったが、空は抜けるような快晴。「きっと、大丈夫」。遠藤さんはつぶやいた。

 25日夕、講習を終えた遠藤さんを除く3人は新幹線と在来線を乗り継いで那須塩原に到着、タクシーで郡山に向かった。栃木、福島の県境を越えたところで、タクシーのフロントガラスに白いものが当たり始めた。「おい、雪だ」。付近をみると道路には積もっていないが草地には雪が残っていた。「まずいな。1番列車登れるんだろうか」。その不安は現実のものとなっていく。

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