そこで、ここからは後者に焦点を当て、店主の辻山氏にインタビューした内容を紹介していきたい。
▽客を誘い込み、リピーターになってもらうためのさらなる工夫
Titleは、前述のように荻窪駅から徒歩12~13分の距離にある。たしかに作家や編集者などの文化人が沿線に多く暮らす地域ではあるが、駅からの距離を考えれば、集客に特別有利な立地とは言い難い。辻山氏がこの物件を選んだ理由としては、家賃が格安だったことも大きかった。そう考えると、同店が成功したのは東京の一等地で開業したからではないことがよく分かる。首都圏でも、郊外や地方都市にロケーションを移しても成立し得るヒントに満ちているのだ。
そこでまず、来店客の構成について聞いてみた。
「開店当初は、遠くからわざわざ来てくれる人が6~7割いらしたのですが、現在では自転車圏も含めたご近所の方が7割、残りが3割という程度に落ち着いています」
ご近所以外が3割…ターミナル駅前の大型書店ならいざ知らず、駅から距離のある町の本屋さんとしては、かなり高い数字ではないだろうか?
「ふつうの本屋さんなら、ほとんどないかもしれませんね。うちは二階にギャラリーがあって、2~3週間ごとに展示を入れ替えるなど、また来たいと思っていただけるようにあれこれ工夫をしています」
ちなみに夏には暑さからどうしても客足が落ち込む。そこで、トークショーを頻繁に開くことを誘い水にもしているという。