そして何より大きいのが、選書の工夫だ。Titleは新刊書店ではあるが、取次からの新刊のパターン配本は断り、辻山氏がみずから情報を集めてこれはと思ったタイトルを注文するようにしている。さらに、リトルプレスと呼ばれる一般書店には流通しない自主製作刊行物も取り揃えて目玉にしている。これにより、町の小さな本屋さんでありながら、行くたびに意外な本に出会えるという、ある意味大型書店にも通じる来店体験を提供できるのだ。
それもあり、またわざわざ駅から10分以上歩いてくるということもあって、来店客の滞在時間が長くなりがちなのがTitleの特徴だ。
「店の場所柄、急いで買い物を済ませるというふうにはならないので、皆さんだいたい30分から1時間ほど滞在されますね。平均的な客単価は2000円ほどで、ハードカバー1冊と文庫本1冊を一緒に買っていくくらいの金額です。面白いのは、女性のお客さまが全体の6~7割ほどになるのですが、男性は最初から買う本をこれと決めて来店される傾向があるのに対して、女性は店内を巡るうちにあれもいい、これもいいと、目に留まった本を重ねて買われる方が多いことです」
▽Webを告知宣伝にうまく利用
小さな本屋さんなのにそこまで滞在時間が長くなるというのは、カフェやギャラリーの効果がまずあるにしても、それだけ品揃えが意外性と誘引性に富んでいるということだ。訪れるたびにわくわく感やときめきがあり、時間を忘れて本の世界に浸れるいうことでもあり、それがリピーターの獲得につながっていることが分かる。