ネスカフェで「ダバダ」と「違いがわかる男」が消えた理由 (3/5ページ)

コーヒーに対するニーズが多様化

 ネスカフェ ゴールドブレンドが生まれた67年の日本といえば、東京オリンピック後の高度経済成長期で、少しずつ日本人が豊かになっていく時代である。

 人口も右肩上がりで増え、みな今日より明日がよくなるものだと信じて脇目もふらず働き、「企業戦士」なんて言葉も生まれた。そういうイケイケドンドンの社会のなかで、それまで喫茶店で注文をするのが当たり前だったコーヒーを、家庭や職場でお湯をわかすだけで手軽に飲めるようにしたのが、日本初のフリーズドライ製法ネスカフェ ゴールドブレンドだった。

 だが、時代は変わる。各家庭にコーヒーメーカーが普及して、自宅で豆を挽き、レギュラーコーヒーを楽しむ人があらわれ、90年代に入ると、スターバックスに代表されるエスプレッソマシーンを用いたカフェが登場。豊かになったことで、コーヒーに対するニーズが一気に多様化したのである。

 そこへ拍車をかけたのが、少子高齢化だ。単身者や核家族が増えたことで、「個」の満足感が求められるようになり、「一家全員が朝食をとる際、トーストと一緒にコーヒーを飲む」というネスレが日本に持ち込んだ飲用習慣自体も大きく揺らぎ始める。

 島川部長が「我々のビジネスも厳しい時代があった」と振り返るように、「インスタントコーヒー冬の時代」だった。だが、そんな苦しい時期を経て、ネスカフェ ゴールドブレンドは大きな進化を遂げる。

 自分が飲みたいときに、飲みたいコーヒーが、ワンタッチでいれたてで飲めるという、個の多様なニーズに応える画期的なシステムを生み出したのだ。

 もうお分かりだろう、10年に登場して累計400万台以上の大ヒットとなった「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」だ。

 それまでの瓶に入ったネスカフェ ゴールドブレンドはどうしてもダバダCMを知るような高い年齢層に支持されてきたが、バリスタが出たことで20~30代の単身者やファミリーが急速に増えた。一気にブランドの若返りに成功したのだ。

日本人のコーヒーを飲む環境や、場所が大きく変わった