なぜ和束に?
和束町は人口3800人余り。主要産業は茶生産で、府内産「宇治茶」の45%のシェアを占める。山並みに広がる茶畑が魅力で、町は「茶源郷(ちゃげんきょう)」としてアピール。町内を訪れる観光客は約9万人(平成28年)で、年々増えているという。
和束町が位置するエリアは南山城地域と呼ばれ、大阪や京都、奈良のベッドタウンとして宅地開発が続く木津川市や京田辺市、精華町なども宿泊施設が極端に少なく、ホテルの空白地だ。このため日帰り観光が多いのが実情だ。
そのため、個別にホテル事業者などと交渉を進める自治体もあり、誘致合戦に力を入れる。「観光客やビジネス関係者が滞在すれば、地元で買い物などをしてくれ、確実にまちおこしにつながる」(自治体関係者)からだ。
そこに登場した星野リゾート。星野代表の手腕に期待する声は高まるばかりだ。ホテル経営に加え、経営不振に陥った旅館などを立て直すビジネスモデルを確立。夏場は閑散とする北海道のスキー場に雲海を楽しめる施設を設けて通年の観光地に育てるなどした実績があるためだ。
さらに同社は昨年4月、大阪市中心部の新今宮駅(浪速区)周辺で2022年にリゾートホテルの開業を目指すことを表明。新今宮といえば、近くに通天閣や新世界、日雇い労働者が多く集まる街「あいりん地区」がある大阪らしい土地柄。リゾートホテルのイメージからはかけ離れている。JRと南海電鉄、地下鉄が接続する立地の良さに加え、「ディープな文化体験」(星野代表)を観光の売りにする戦略は、地元や世間を驚かせた。
京都観光の混雑緩和に効果あり?
星野リゾート進出の仲介を果たした京都府にとっても、人気観光地が大混雑するなど飽和状態となっている京都市から周辺部へ、観光客を分散させることが課題となっている。