ドヤ街「あいりん地区」の次は… 星野リゾートが狙う意外な土地 (3/3ページ)

山すそに広がる茶畑。美しい景観が「日本遺産」に認定された=京都府和束町
山すそに広がる茶畑。美しい景観が「日本遺産」に認定された=京都府和束町【拡大】

  • パートナーシップ協定に調印した(右から)京都府の山田知事、星野リゾートの星野代表、和束町の堀町長=1月30日、京都府和束町

 京都市には、年間5千万人を超える観光客が訪れる。中心部では京町家が姿を消し、ホテルや簡易宿所の建設が相次ぎ、地域のコミュニティーが崩れていく危険性も指摘される。

 山田知事は「(増え続ける観光客は)京都市のキャリング・キャパシティー(収容力)を超えつつあり、京都の魅力を守ることに齟齬(そご)が出始めている」と危機感を募らせる。このため府は日本海に面する北部や自然豊かな中部、宇治茶がブランド化している南部をPRする「海、森、お茶の京都」の施策を進めているが、効果は道半ばだ。

 近畿大経営学部の高橋一夫教授(観光マーケティング)によると、観光学では「いらだち度モデル」と呼ばれる指標がある。観光客が収容力を超えると、地元住民は不満を募らせ、最後には観光客を敵視しだすという。高橋教授は「世界の観光地でもみられる現象で、京都府が京都市から地方へ観光客を分散させる施策は正しく、地域観光を守るというメッセージにもなる」と評価する。

 京都南部では、2023年に宇治田原町に新名神高速道路のインターチェンジができ、北陸新幹線の新駅が京田辺市内に整備される予定。将来的な交通アクセスは今以上に良くなるからこそ、周辺自治体も地域発展の可能性に期待を膨らませる。

 意外性が注目されがちな星野代表の和束町進出も、こうした行政施策やインフラ整備の進捗(しんちょく)を冷静に見据えたうえでの決断なのだろう。観光地にどのように経済的価値を生み出していくのか、その手腕が注目される。