
インタビューに答える東大大学院の松尾豊特任准教授【拡大】
日本の人工知能(AI)研究をリードする東大大学院の松尾豊特任准教授に、AI社会の行方と課題をどうみるか聞いた。
(AIの新技術である)ディープラーニングの意義は「目を持つ機械」が誕生したことだ。例えば信号が自動車を認識できれば、赤と青を一定時間で切り替える必要はなく、交通状況に合わせて一方向の道路だけを青にすることも可能になる。
想像力を働かせることで大きなビジネスが生まれる。モノを認識して部屋を片付けてくれるロボットが実現すれば売れると思う。現在の家電製品は認識能力を持っていない。ディープラーニングが普及すれば、想像できないほどの変化の波が社会に訪れるはずだ。
IT業界は米国のグーグルやアマゾン・コムなどの外資企業が席巻している。AIの分野は米国と中国による戦いだ。日本が対抗するには逆転ホームランを打つことが必要だが、国全体が保守的になっており、その覚悟が感じられない。
日本は機械やロボット開発で競争力が残っている。これらをディープラーニングと組み合わせることにしか日本企業に勝ち目はない。日本はロボットへの抵抗感が少なく、人手不足で需要もある。ディープラーニングの技術はインターネットで勉強でき、地方の若者も起業し世界に打って出るチャンスがある。
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【プロフィル】松尾豊
まつお・ゆたか 1975年生まれ。専門はAI。人工知能学会倫理委員長を務める。2014年から現職。