「スピードと体力があり大学生では関東でピカイチだった」と慶応大でチームメートだった大森文彦(あやひこ)さん(61)は振り返る。左フォワード(FW)の大森さんのセンタリングをセンターFWの章男社長がシュートするのが定番の攻撃。四年生の最終戦となる早慶戦でもそうやって点を取り、有終の美を飾った。
「中途半端が一番危険」
章男社長は2015年、大リーグのイチロー選手(43)と対談する機会があった。「ピンチに強いのはなぜ?」と問われ、答えた。
「危機の場合は、そこに近づいた方が安全だという意識がどこかにある」
ホッケーではサッカーでいうコーナーキックのような権利が相手に与えられることがある。その時、チームで一番足が速かった章男社長の役割は、思い切りシュートする相手に向かってゴールラインから突進し体を張って防ぐことだった。
出足が遅れると、時速150キロを超えるシュートボールが上がってきて体や顔に当たり、かえって怖い。「中途半端が一番危険。近づくことが安全なんだと、体で覚えた」
社長就任後、大規模リコールで米議会公聴会に出席したり、女性役員(当時)が規制薬物を輸入した麻薬取締法違反容疑で逮捕(後に起訴猶予)された際に周囲の反対を押し切って記者会見したり。章男社長には、危機の渦中に飛び込んで会社を守るイメージがある。ホッケーが形づくった行動原理は今も、章男社長の奥深い所に根付いている。
宮本 隆彦(みやもと・たかひこ)
中日新聞 記者
1971年生まれ。95年、早稲田大学を卒業し、中日新聞社入社。敦賀支局、大垣支局、名古屋本社社会部、経済部、ベルリン特派員などを経て、2015年から名古屋本社経済部。
(中日新聞 記者 宮本 隆彦)(PRESIDENT Online)