仕方なく支払うけど料金がおかしい…思いを事業化、葬儀業界に一石を投じた「イオンのお葬式」 (3/5ページ)

 イオンはこうした消費者意識の変化を取り込み、直葬に当たる「火葬式」から比較的大規模な「家族葬セレクト」まで、5つのプランを中心に提案している。最も需要が多いのは「家族葬」で、東京近郊では約72万円で実施できる。

 この葬儀の特徴は、「価格も品質もイオン基準」ということ。「専門業者は一切入れずに社員の素人目線から、葬儀で『こうしてほしい・してほしくない』内容を140項目の『葬儀サービス品質基準』として定めました。趣旨に賛同いただいた葬儀社を特約店としてお願いしています」と説明する広原氏。

 項目の中身は、「儀式では白手袋を着用」「遺体の変化への対応の仕方」「お別れに使う花が地面に落ちた場合は捨てる(絶対に拾ってお棺に入れない)」といった内容だとか。項目は年に一度差し替えて、顧客ニーズの変化にも応えている。当初は「依頼件数が少ないわりに要求が細かくて面倒くさい」と葬儀社から反発も受けたが、徐々に理解が深まった。

 スタートして4年半たち、生前予約している「会員」は年間2万件に増えた。年間葬儀件数は非公開だが、6割が会員、4割が飛び込みでの申し込みだという。

 会員獲得は4つの方法で行う。(1)電話相談をしてきたお客に会員登録を勧める、(2)イオンの主要店舗で「終活フェア」を行い、訪れたお客に勧める、(3)「永代供養」の生前予約をした人に勧める、(4)「イオンの生命保険」の加入者に勧める、というやり方だ。現在、会員の平均年齢は70歳。自分のことも心配だが、90代の老親が健在という人も多い。

 (1)はコールセンターでの対応のこと。同社は札幌市と本社のある千葉市にコールセンターを2カ所持ち、葬儀に関する一切の相談に対応している。専門性を持つスタッフが、お客の苦情とも向き合い、葬儀社の見積書や請求書内容もチェックする。(2)はキャラバン隊を組んで、イオンの国内店舗を巡回して説明しながら会員登録を促す。広原氏も参加している。

葬儀代金一切をカードで支払えるのはイオンだけ