またまた大変身…ホンダの新型「インサイト」が縮小市場のセダンに生まれ変わった理由 (3/3ページ)

 このi-MMDに1.5リッターのアトキンソンサイクルエンジンが組み合わされており、走行状況に応じてエンジンを停止させた「EVドライブ」、エンジンを発電機として使用してモーター走行する「HVドライブ」、クラッチを直結させてエンジンで車輪を駆動する「エンジンドライブ」の3ウェイ走行が可能だが、開発チーフの堀川氏は「このシステムにおけるエンジンの役割は発電機だと認識している。インサイトはほぼモーターだけで走る電動車という位置づけだ」と語る。

 試乗は好感触

 実際に神宮外苑周辺の2.5キロほどのコースを走る機会に恵まれたが、街中を流す分には完全にEV走行に徹していた。静粛性の高いモーター走行は十分に力があり、クルマの挙動や足回りは非常にスムース。大きめのボディには適度な重さが感じられ、ステアリングから伝わる安定感と、余裕のある上品な走りが印象的だった。

 車内の設えは上質に仕上げられており、インパネを覆う手張りのソフトパッドはしっとりとした優しさを醸し出す。運転席周りのデザインは落ち着きがあり、スイッチ類の質感の高さや品のある雰囲気は幅広く支持されそう。シフト操作をボタン式にしたギアセレクターには味気のなさもあるが、操作は容易で不便はほとんど感じなかった。

インサイトのインテリア

インサイトのインテリア

 外観はリヤエンドに向かってなだらかなルーフラインが続くファストバックスタイル。ワイド&ローのボディは巧みな曲線使いで立体的に仕上げており、躍動感や高級感を演出している。グリルやヘッドライト周りに組み込まれたクロームパーツの使い方も絶妙だ。一部で「奇をてらいすぎ」などとデザインが不評だったプリウスより、インサイトの方がスタイリッシュで美しいと思うのは、ごく一般的な考え方ではないだろうか。

 はたして、グローバル市場をにらんだ上級ミドルセダンへの大胆な路線変更は吉と出るのか。寺谷氏は「インサイトにはHV専用車としての良さが確実にある。そして、確実に選ばれるクルマだと判断して投入を決めた。このクルマの価値に興味を持ってくださる方、一人でも多くの方に選んでいただきたい」と大きな期待を寄せる。「クルマの本質的な魅力」を磨いて表舞台に戻ってきたインサイト。捲土重来はなるか-。

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