狙うのは「スマホ以後」 MSがアップルから世界首位を奪えたワケ (3/4ページ)

※写真はイメージです(写真=iStock.com/wundervisuals)
※写真はイメージです(写真=iStock.com/wundervisuals)【拡大】

かつてのライバルと手を組む

 そしてここでも、ナデラCEOはその先頭に立って仕事を変えていく。驚くべきことに、なんとかつてのライバルと次々に手を組み始めたのだ。CEO就任から1カ月ほどで、自らシリコンバレーを訪れ、競合他社に相対。オープンソフトウエアの世界のエンジニアたちとも提携を結んでいる。

 これはITの世界の人には驚天動地の出来事だった。ソフトウエアで圧倒的な力を誇ってきたマイクロソフトは、競合他社ではなく、自社製品ですべてをまかなう「クローズ」な道を選んでいたからだ。しかし、これが結果としてマイクロソフトの取り組みを後手後手に回させた。だから、停滞が起きたのだ。

 ところが、これを「オープン」にシフトする。オラクルとも、セールスフォース・ドットコムとも、Linuxとも、さらには驚くべきことに、長年のライバル、アップルとも手を組んだのだ。iPhoneは敵ではなく、マイクロソフトのアプリやサービスをたくさん使ってくれる素晴らしいデバイスだ、と。実際、アップル向けのソフトウエア部隊もできた。

十数億ユーザーという強み

 端的に、マイクロソフトはクラウドを使ってもらえばいいのである。そのトラフィックそのものをマネタイズするのだ。ここでたくさん使ってもらうには、自社製品のみならず他社製品でもまったく構わない。競合も含めたいろんな会社で素晴らしいIT環境を作れば、それだけクラウドを使ってもらえることになる。

 一方で、競合から見ると、マイクロソフトのソフトウエアを使っているユーザーは世界で十数億人いる。アップルにしても、iPhone上でOfficeが動くことは、ユーザーの大きな利点になる。双方が、ウインウインになるのだ。さらに、Windowsはゲーム機のOSにもなり、IoT機器のOSにもなった。こうして、あのアップルまで、マイクロソフトは今や自分たちのビジネスに取り込んでしまったのである。

 これは、マイクロソフトの強みを最も出せるビジネスにフォーカスできたことを意味していた。世界最強のソフトウエア開発力を持ち、アップルにもグーグルにもフェイスブックにもないビジネス領域での圧倒的な強さを武器に、競合と次々と提携して他にない消費量が稼げる、クラウドビジネスで圧倒的な存在感を持つ会社になったのだ。レガシーの部類から、クラウド領域で世界で戦える数社の一角を担う存在へと、大きく転換させることに成功したのである。

「ポスト・スマホ」時代での覇権奪取へ

 マイクロソフトはたしかにスマートフォン時代に乗り遅れた。しかし、スマートフォンが十分に行きわたった今、次の「ポスト・スマホ」時代の覇権争いに大きな存在感を示すことになった。これこそ、株価が急上昇した理由だろう。

 パソコンからスマートフォンへの移行が一気に進んだような大きな再編がこれから起きないとは限らない。スマートフォンの歴史は、まだ10年ほどしかない。この先10年、本当にこのままスマートフォンが世界を席巻し続けるのか。それとも新しい再編が起きるのか。そのとき、誰が王者になるのか。株式市場は、それを見越しているのではないか。

 実際、アップルから未来の可能性を感じさせるような技術がなかなか聞こえてこない、と感じている人は少なくないだろう。だが、マイクロソフトには、コンピューティングの世界を一変させてしまうのではないか、とささやかれ、大きな注目を浴びている技術がある。そのひとつが、MR(Mixed Reality/複合現実)だ。

マイクロソフトが持つ最新の「MR」技術とは