ポリマーの未来をクルマで表現。コンセプトカー「ItoP(アイトップ)」のユニークな成り立ち (4/4ページ)

 【タイヤにも革新的な骨格材を採用】

 このリア・サスペンション側にパワーユニットが組み込まれている。つまりインホイール・モーターによる後輪駆動。そのモーターは定格出力15kW/最高出力23.5kW(左右輪にあるから合計30/47kW)。EV開発をウォッチングしている者なら外観からそれとわかるように、おかやま次世代自動車技術研究開発センター(OVEC)がもう7年近くにわたって開発してきたユニットの第2世代だ。基本原理としては永久磁石回転子・同期モーターだが、回転部分を外側に置くアウターローター・タイプである。同じ岡山に拠点を置く戸田レーシングがデリバリーしている。このあたりも、モータースポーツ系ものづくりのつながりが浮かび上がる部分ではある。

 そしてタイヤ。ここにも「しなやかタフポリマー」の応用が進められている。タイヤの骨格であるカーカスは合成繊維の糸(コード)を密な簾(すだれ)状に引き揃え、合成ゴム(これもポリマー)で貼り合わせたもの。この骨格材を構成するポリマーの靱性と疲労強度を飛躍的に高めれば、骨格を薄くできる。つまり軽くてしなやかなタイヤになるわけだ。このポリマーの開発には九州大学、京都工芸繊維大学などが参画、タイヤにまとめあげるのはブリヂストンが担当している。このタイヤを組み合わせるホイールもCFRP成形品であり、もちろんTCMが設計、製造したもの。

 【より進化した燃料電池の搭載も想定】

 「しなやかタフポリマー」プログラムには、リチウム電池の正極と負極の間を絶縁しつつ電解質は通過させるという役割をするセパレーター、また燃料電池(固体高分子型)で電極間に挟まれて水素イオンを通過させる電解質膜(イオン交換膜)というそれぞれのポリマー薄膜についても、強度を高めて薄くする開発も当初からのテーマとして組み込まれている。これらもすでに現物ができあがっているが、リチウム電池、燃料電池それぞれに小型の試作品が公開されている状況で、今の「I to P」には既製品の電池が搭載されている。

 こうした内容を詰め込んだ、科学技術革新のデモンストレーターたる「I to P」。その命名は「Iron(鉄)」から「Plastic」へ、を意味する。もうひとつ“裏の”意味としては、このImPACT「しなやかタフポリマー」の推進・取りまとめ役であるプログラム・マネージャー、伊藤耕三・東京大学大学院教授のことを指し示している、という話も聞こえてきた。

 そしてこの「I to P」は、はじめにも紹介したように、実走するコンセプトカーである。

 (文:両角岳彦/写真協力:ImPACT)

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