東京商工リサーチ特別レポート

突然シャッター閉めた名物書店 なぜ私的整理は頓挫したのか (1/4ページ)

東京商工リサーチ

 大阪府内で高い知名度を誇った天牛堺書店が破産を申請した。活字離れや電子書籍の登場で出版不況が直撃。地域文化の拠点の一つではある書店もビジネスとして生き残り策を求められる時代に入った。(東京商工リサーチ特別レポート)

ピーク時は学習塾も経営

 大阪府堺市を中心に12カ所の書店を展開していた天牛堺書店(大阪府堺市南区、藤吉信彦社長)が1月28日、大阪地裁堺支部に破産を申請した。負債総額は17億4144万円だった。

 大阪府内では高い知名度を誇っただけに、SNSでは「驚いた」、「ショック!!」などのつぶやきが相次いだ。倒産しても店舗シャッターには閉店を惜しむ声や感謝のメッセージが綴られた紙が多数貼られている。愛された書店の倒産に地元では様々な反応がみられた。

 天牛堺書店は、1963年12月に藤吉信夫氏が創業し、1968年7月に法人化した。書籍・雑誌などの新刊書のほか、古書販売にも力を注いでいた。特に、古書は高価買い取りで売れ筋商品を取りそろえ、販売実績を伸ばしていた。順調に事業拡大をたどり、南海電鉄沿線の駅構内や駅前などに次々に出店、立地の良さもあって通勤通学のサラリーマンや学生などを中心に、来客数を伸ばした。

 ピーク時は25店の出店に加え、学習塾も2教室経営し、1999年5月期の売上高は約29億900万円を計上した。だが、若者の活字離れやインターネットの普及、電子書籍の登場などで、出版不況と呼ばれる厳しい状況に直面。書籍販売を中心にしていた経営が一気に苦境に陥った。

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