東京商工リサーチ特別レポート

突然シャッター閉めた名物書店 なぜ私的整理は頓挫したのか (3/4ページ)

東京商工リサーチ

 こうして一部の金融機関からはプロパーと保証協会分をあわせた融資については、2019年4月1日まで元本返済の猶予に応じる回答を得ることができた。だが、他の金融機関からは提示した私的整理案に賛同を得ることができなかった。

 金融機関が私的整理案に難色を示したのは、決算処理への根強い不信が背景にあった。

(1)2014年5月期から2017年5月期にかけて受けた役員借入金の債務免除(合計約2億6200万円)を売上に計上していた。

(2)2015年5月期に店舗の耐震工事に係る売上補償(約1200万円)を売上に計上していた。また、同期は店舗の耐震工事負担金(約2000万円)を地代家賃と相殺処理していた。

(3)2016年5月期に退職年金収益(約1100万円)を売上に計上していた。また、同期の書籍等の仕入を過少申告(約8000万円)していた。

(4)当社代表者が別途経営する企業へ貸付などの金融支援を行っていた。

後継者問題抱えて廃業する店舗も

 2018年5月期は、売上高が16億8062万円、営業損失が2億6511万円、経常損失が2億8808万円、純損失が5億1741万円と厳しい決算になっていた。同期末で2億4256万円の債務超過に転落したが、その後の財務デューディリジェンスで債務超過額は6億1637万円に達していたことがわかった。

 業績改善も見込めず、金融機関から新規の資金調達もできないまま、1月17日に一部の金融機関が預金差押を実行。ついに事業継続を断念し、破産を申請した。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus