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4期連続赤字で“株価”10分の1…経営難に喘ぐ「SHOWROOM」 (3/4ページ)

 出資したいVCは山ほどいそうだが……

 今度はこう思う人もいるのではないだろうか。

 「そうはいっても、ベンチャーキャピタル(VC)から出資してもらえば、債務超過なんてすぐに解消できるんじゃないの?」

 確かに、いまはカネ余りの時代。多くのベンチャーキャピタルが投資をしたくてウズウズしている。SHOWROOMぐらい知名度のある企業であれば、諸手を挙げて出資するベンチャーキャピタルは山ほどいそうなものである。

 ところが、話はそう単純にはいかない。その難しさはSHOWROOMの過去のファイナンス実績から推測できる。

 SHOWROOMは、少なくとも過去2回増資をしていることが決算書から読み取れる。第1期から第2期、第2期から第3期にかけて、資本金および資本剰余金がそれぞれ増加しているが、それは増資をしているからにほかならない。

 過去2回の増資の引受先は親会社であるDeNAではない。DeNAの有価証券報告書を見ると、SHOWROOMに対する持分比率が90.0%→81.8%→74.1%と低下しているからだ。DeNA以外の投資家(ベンチャーキャピタルだと思われる)が増資の引き受けをしているため、相対的にDeNAの持分比率が低下しているのである。

 DeNAのプレスリリース(2015年6月24日)によれば、設立直後はDeNAが9000株、ソニー・ミュージックエンターテイメントが1000株を保有していた。その後のDeNAの持分比率の低下割合から逆算すると、1回目の増資で1001株、2回目の増資で約1144株を発行していることが分かる。

 それぞれの増資によって、いくらの資金を調達できたかというと、1回目が1億円、2回目が1200万円となっている(資本金と資本剰余金の増加額から算出できる)。

 1回目が1001株発行して1億円の資金調達できたのにもかかわらず、2回目は1144株発行して1200万円しか資金調達できていないのである。1株当たりで計算すると、1回目は10万円だったのに、2回目はたったの1万円程度での新株発行だったのだ。実に10分の1の株価下落だ(図表4)。

 株価は10分の1に大暴落

 株式を新規で発行する際、第三者である専門家が、企業の実態を詳細に調査し(これを財務デューデリジェンスという)、妥当な株式の価格を算出(これをバリュエーションという)する。

 バリュエーションの手法は複数あるが、ベンチャー企業の場合、DCF(Discounted Cash Flow)法を使うのが一般的だ。DCF法とは、事業から生み出される将来のキャッシュフローを現在価値に引き直すことで、現在企業がいくらの価値があるのか、そしてその企業が発行する株式の価値はいくらなのかを算定する手法だ。

 外部に公表していない詳細な財務情報を徹底的に調べ上げ、将来の成長性なども加味したうえで、適正な企業価値(株価)を算出するというプロセスを踏む。そのため、バリュエーションの結果である株価は、企業の実態に限りなく近い数値といえる。

 仮にSHOWROOMが「今は先行投資段階で、将来収益化する(キャッシュを生み出せる)事業の見通しが立っている」のであれば、株価は上昇するはずだ。それが逆に10分の1にまで大暴落しているのである。企業価値が大幅に毀損していると言わざるを得ない。

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