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時速360kmの超高速車両も受注…世界の鉄道市場で日立が存在感を発揮するワケ (2/5ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

英国民を驚かせた日本企業の仕事ぶり

 「ペーパートレインと言われた時期もありました」。日立の関係者はこう振り返る。入札に相次ぎ敗れ、書類には登場するものの、実際に姿を現すことがなかったため、こう揶揄(やゆ)されることもあったようだ。ペーパートレインから脱却する転機となったのが、2009年から営業運転を開始した「海峡連絡線(CTRL)」の高速車両174両の受注だった。英国独自の規格に対応するため実証実験を繰り返すといった地道な努力を積み重ねてきた成果でもあった。

 ロンドンと英仏海峡トンネルの入り口のアシュフォードを結ぶCTRLに導入されたのは、最高時速140マイル(225キロ)を誇る「Class395」。それまで83分かかっていたロンドン-アッシュフォード間を半分以下の37分に短縮したが、何より英国民を驚かせたのは、車両メーカーがきちんと納期を守ったことだったという。

 日立によると、英国では納期遅延が恒常化しており、納期を守る方が"異例"だったというのだ。Class395は契約納期より半年早く営業運転を開始。2010、11年の記録的な大雪でも運行を確保したことで英国民の大きな信頼を勝ち取ることになったのだ。ただ、納期を守るのは日本企業の車両メーカーであれば当たり前のことともいえる。ではなぜ、日立の受注が際立っているのか。

 梅原さんは「高速車両は気密性の点からステンレス製では難しいのですが、日立は軽量で気密性の高いアルミ製の車両を作るのが得意なのです。車体を効率的に作る技術『A-train』という規格を持っていて、大量生産を得意としています。製造価格を安く抑えられるので、購入する側に喜ばれるということになります」と指摘する。

 A-trainは「ダブルスキン構造」と呼ばれる骨組み無しでも強度を確保できる構造で、部品点数を大幅に削減。日本国内の在来線特急などにも多く採用されている。「新線探訪記」の1回目で登場した相模鉄道の「相鉄・東急直通線」向け新型車両20000系も実は日立のA-train。ヨコハマネイビーブルーの車体が目を引く日本の通勤車両も、鉄道発祥の地を疾走する高速車両も、日立のA-trainという共通点があったのだ。

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