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たかがインキ、されどインキ…日本が世界に誇る「緑色の塗料」の正体 (1/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 モノづくり日本のメーカーの中でも、緑色のインキで世界を席巻した企業はほかに例がないだろう。スマートフォンやパソコン、家電などあらゆる電子機器で欠かすことのできないプリント基板(配線板)。その基板に使われるインキで世界トップシェアを誇るのが太陽ホールディングス(東京都豊島区)だ。半導体パッケージ基板の分野では9割以上のシェアを誇る。たかが電子部品の塗料と侮るなかれ。その開発には並々ならぬ苦労と目からウロコの秘密が隠されていた。

PC・ファミコンソフト…「緑色のアレ」の秘密

 網の目のように回路が張り巡らされているプリント基板といえば、たいていは緑色だ。ファミコンのゲームソフト(カセット)も、本体との接続部分は緑色。パソコンのメモリーを増設する際に見たメモリー板も緑色だった。でもなぜ、緑色なのか。

 「それは、プリント基板に傷やゴミがいないか人が最終的なチェックをしていたからです。人間の目にやさしい緑色が広まりました」と明かすのは、太陽ホールディングス 研究本部の研究2課課長、植田千穂さん。疲れ目には「遠くの緑」などといわれるが、先端技術の結晶であるプリント基板にも、そんな配慮があったのだ。

 もっとも、電子部品は年々緻密になり、今や基板の配線はミクロン単位。「塗料ですが、機能材料は電子顕微鏡で見ないと分からない世界です」(植田さん)。とても人が目視で検査できるレベルではなくなっている。それでも緑色が主流なのは、「AOI」と呼ばれる自動光学検査機器も、昔から続く緑色に合わせて設定されているため、今も緑色が使われているだのという。

 そもそも緑色のインキを施すのは、「配線がショートしないように絶縁するため」(植田さん)。絶縁体の役目を果たすインキは「ソルダーレジスト」と呼ばれる。植田さんは「私たちのソルダーレジストがスマートフォンの小型、軽量化に貢献しています」と胸を張る。インキがスマホの進化にも影響するのか。少し大げさのようにも聞こえるが、さにあらず。プリント基板で使われるインキはスマホの進化と大きな関係があった。

 プリント基板になぜインキが使われているのか。少し専門的な話になるが、太陽ホールディングスのインキは、電子部品が取り付けられる前のプリント基板である「プリント配線板」に使われている。プリント配線板の段階では基板は緑色ではない。電気を通す銅の回路パターンが露出した状態では、断線やショートといった電気的なトラブルが生じる恐れがある。

 そのため、ここに絶縁体の役割を果たす緑色の塗料を施すのだ。プリント配線板に感光剤を塗布し、紫外線を照射。照射しない部分を現像することで感光剤感光した部分のみを選択的に絶縁膜とするのだという。理解の及ばない世界の話で実感としてイメージはできないが、緑色の塗料でコーティングされた部分が絶縁体になっていると理解すればいいのかもしれない。

 「一般の塗料と違うのは、絶縁信頼性や耐光性といったさまざまな機能が備わっている点です。組成のバランスが重要です。ちょっと違うだけでも性能が劣ってしまいます」

 ソルダーレジストの「ソルダー」ははんだ付けを指し、「レジスト」は抵抗するという意味。部品をプリント基板に取り付ける際、緑色のインキが不必要な部分にはんだが付着するのを防ぐ役割を果たすのだ。

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