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たかがインキ、されどインキ…日本が世界に誇る「緑色の塗料」の正体 (2/3ページ)

SankeiBiz編集部
SankeiBiz編集部

 誰もが1度は見たことがある「緑色」の正体

 熱やほこり、湿気などに耐え、保護膜として回路パターンの絶縁性を維持するのが緑色の塗料であり、太陽ホールディングスはこのインキの技術で、世界を制した。1953年の創業当時は、印刷用のインキが主力だった。高度経済成長期の70年にプリント基板用の絶縁インキに参入。その6年後には印刷用のインキから撤退するという大英断を下す。ソルダーレジストと呼ばれるプリント配線板用の絶縁インキに特化することにしたのだ。まだコンピューターがそれほど普及していなかった当時、「まさに社運を賭けた挑戦」(同社)だった。

 「プリント配線板というものが立ち上がったばかりの時期に、ソルダーレジストの仕組みや材料のパテント(特許)を広く取ったのが大きかったです。顧客密着型のサポート、フォローで信頼関係を構築することができ、後発の他社が参入しづらかったという状況もありました」

 未知数だったエレクトロニクス産業の可能性と成長に賭けた同社の読みは当たり、ソルダーレジストの分野では、他の追随を許さない技術を確立。さらに、時代のニーズに合わせたソルダーレジストの開発を推進した。原材料となる樹脂から設計する取り組みを行ったという。こうした努力が実り、半導体大手メーカーの認定を獲得。半導体パッケージ基板用のソルダーレジストでは、市場シェアの9割以上を獲得するまでに成長した。

 植田さんは「堅い板に使われるリジット(堅い)のインキと、フレキシブルの配線などで使われるインキは性能が全然違います。折りたたみできるスマートフォンには、配線板も柔らかいフィルム状の曲がる素材が使われています」と説明する。当然、その素材に使われる塗料には、何回折り曲げても割れが生じず、絶縁性を保つことが求められる。

年々上がる要求性能に対応

 電子機器の普及に伴い、顧客から寄せられる要求性能も上がってきた。例えば、車載用基板であれば、屋外の過酷な環境や、高電圧への長時間使用に耐えうる性能が求められる。小型化に伴い、高密度配線が進んだ基板では、従来よりも高い絶縁性能の他に強度や低熱膨張率などの性能も要求されるという。

 性能だけではない。長らく緑色が主流だったソルダーレジストの色にも及ぶ。あるスマホメーカーは「マットな黒の質感でお願いしたい」と要求してきたという。スマホを分解でもしなければ、外からはプリント基板は見えないにもかかわらず、である。

 またここで少し専門的になるが、この黒色のインキの実現には相当な困難が伴ったのだという。通常、黒色は炭素主体の微粒子である「カーボンブラック」を混ぜて再現する。しかし、ソルダーレジストは感光剤。カーボンブラックを使うと、「光をすべて吸収してしまい、ソルダーレジストを硬化させることができない」(植田さん)という問題に直面したのだ。

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