iPS細胞の作製に関する主な研究成果【拡大】
それでも契約書の文言をめぐっては、日本語と英語という微妙なニュアンスの違いがトラブルのもととなりかねない。しかも、交渉は通訳なしで英語で行われただけに、どこに“落とし穴”があるかわからず、製薬会社の知財部門に在籍した経験を持つ京大iPS細胞研究所知財契約管理室の高須直子室長(50)ですら「交渉の前夜は不安で眠れなかった」と振り返る。交渉が不調に終わり、係争に発展すれば、京大は弁護士費用など1億円以上の出費と解決までに約2年の歳月を費やすおそれもあった。
係争を回避できたのは相手が先に折れるという運に恵まれただけなのか?
「それは違う。『iPS=山中教授』というイメージが浸透し、これが係争回避の武器となった」。特許庁の担当者はこう解説した上で「もうひとつは米国のベンチャー企業は研究成果の早期実用化が求められている。係争になるとそれが難しくなるため、避けたのでしょう」と推測する。
日本中がロンドン五輪に熱狂していた8月1日、京大iPS細胞研究所は、筑波大学などとある研究成果を発表した。