企業数、特許出願件数に占める中小企業の割合【拡大】
【特許ウオーズ 中小企業】<上>
「一体どういうことなのか。きちんと説明しろ」
金型の製造加工を手がける中小企業、ヤマシタワークス(兵庫県尼崎市)の社内に怒声が響き渡った。山下健治社長が、呼び出した大手鉄鋼メーカーの担当者を怒鳴りつけたのだ。今から6年前のことである。
両社は、薬を「錠剤」の形にする金型の素材を共同で開発していた。しかし、開発後、鉄鋼メーカー側が金型としての特許を単独で申請したのだ。
「両社で特許を取得する話ではなかったのか」。こう詰め寄る山下社長に、鉄鋼メーカーの担当者は「恣意(しい)的な考えはなかった」と繰り返すばかり。共同での特許取得について取り決めを明文化していたわけではなかったが、ヤマシタワークス側は「当然、一緒に取得するものだと思っていた」(浜田賢治統括部長)。時間の経過とともに、怒りは落胆に変わり、社内には「中小は使い捨てなのか…」という思いが募っていった。
こうした経験は他にもあり、浜田氏は「知識が乏しく、とにかく知的財産戦略の重要性を痛感した」と強い口調で語った。