いきなり熱湯に入れるとこれらの成分が体内に封じ込められるので食べられなくなってしまうということだ。あく抜きに使った水はシロアリ用の殺虫剤として使える。
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FAOが昆虫食と養虫産業を紹介するのは、元手がかからず特殊な技術も不要なので、途上国の不便な土地でも事業を起こせる利点があるためだ。現金収入につながる。
与えた餌が昆虫の体に変わる効率も高い。コオロギの場合は、2キロの餌で虫の総体重が1キロ増える。その餌に残飯類が使える場合もあるし、養豚に比べるとアンモニアの発生も少ない。温室効果ガスであるメタンも出にくい。
昆虫は宇宙でのタンパク源として期待されている。中国は昆虫を利用した生物再生生命維持システムの構築を計画しているということだ。
良いことずくめだが、最大の難点は虫を口に入れることへの抵抗感だ。昆虫食になじみのない食文化圏は西欧を中心に広がっている。気候などの条件で肉食用の家畜を飼育できた地域では、タンパク源を昆虫に求める必要がなかったため、疎遠になったらしい。
歴史と文化による差異が、人口増と気候変動で薄らごうとしている。FAO報告書は、その虫の知らせのような存在だ。(長辻象平)