疑惑残し停滞の時代生む 日本初の心臓移植手術、通称「和田移植」 (2/5ページ)

2013.11.9 12:03

 43年8月8日。患者は当時18歳の少年。心臓提供者は小樽市の海岸で溺れ、札幌医大に搬送されていた駒沢大4年の21歳の男子大学生。和田らが脳死と判定した大学生の心臓が少年の胸に収められ、しっかり鼓動し始めるのを馬原は見た。

 「心臓が動かなきゃどうにもならないからハラハラしていた。良かった、ほっとしたという感情がわき上がったのを覚えている」

 馬原によると、手術前の少年は全身がむくみ、ベッドに力なく体を横たえていたという。それが手術後は自ら食事をし、一時は立てるようにもなった。

 和田移植が実施されたのは、1967(昭和42)年12月に南アフリカで人類初の心臓移植が実施されてからわずか8カ月後。世界30例目だった。ほとんどのマスコミが「新しい医学の誕生」(産経新聞)などと称賛したが、医学界では多くの関係者が戸惑った。

 当時、国内初の移植手術は、東京大や東京女子医大など心臓外科をリードする施設が実施するとみられていた。ただ、いずれも脳死判定や新技術を臨床に持ち込む難しさに阻まれ、動物実験から先に進めていなかった。歴史の浅い札幌医大の実施を予想していた専門家はほとんどいなかった。

 「学会のリーダーたちには札幌医大に追随して移植医療を進めようというムードは感じられなかった」。大阪大の若手医師として心臓移植を研究していた国立循環器病研究センター名誉総長の川島康生(やすなる)(83)は振り返る。

日本医学界の敗北

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