絶食状態に陥ると、細胞が自分自身のタンパク質を食べて飢えをしのぐ。人間を含むほとんどの生物は、そんな不思議な生存機能を備えている。「オートファジー」(自食作用)と呼ばれる現象で、近年は細胞内を掃除して病気を防ぐ役割も判明。神経疾患やがんの治療などに応用する研究が世界中で加速している。(伊藤壽一郎)
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細胞内に「ごみ袋」
細胞は栄養が足りなくなると、内部に突然、小さな膜構造が出現する。膜は不要なタンパク質やミトコンドリアなどの細胞小器官を包み込み、直径1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)ほどの球状の小胞を形成する。
オートファゴソームと呼ばれるこの小胞は、いわばごみ袋のようなものだ。ごみ焼却場に相当する細胞小器官の液胞やリソソームに運ばれて融合し、内容物ごとアミノ酸に分解され栄養源として再利用される。これがオートファジーの基本的な仕組みだ。