青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞の授与が決まった赤崎勇氏(85)。世界中の研究者が見切りをつけた窒化ガリウムにこだわり続け、不可能といわれた高品質の結晶づくりに成功し、半導体光源の新時代を切り開いた。強い信念に基づくその生きざまを支えたのは、「われ一人、荒野(あれの)を行く」という孤高の精神だった。
赤崎氏がLEDの研究に本格的に着手したのは松下電器産業(現パナソニック)に入社した9年後、同社東京研究所に在籍していた昭和48年のことだった。光の三原色のうち赤色と緑色のLEDは既に実用化され、残る青色の激烈な開発競争が世界で始まっていた。
当時、青く光る可能性がある物質はセレン化亜鉛や窒化ガリウムが期待されていた。ただ、窒化ガリウムは電気的な性質の制御に必要な高品質結晶を作るのが非常に難しく、「本命はセレン化亜鉛」との考え方が世界の主流だった。それでも赤崎氏は、窒化ガリウムにこだわり続けた。