再稼働に向けた手続きが進む九州電力川内原発1、2号機=鹿児島県薩摩川内市【拡大】
■温暖化ガス削減に不可欠
原子力発電所の再稼働が今年夏以降、具体的に動き出す見通しである。すでに九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)と関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)が再稼働の絶対条件となる原子力規制委員会の新規制基準に合格。このうち川内原発は今夏中の再稼働を目指し、規制委の最終検査を受けている。今後も政府は新規制基準に適合した原発の再稼働を進める方針を示す。原発再稼働には反対の声も根強く、「なぜ再稼働を急ぐ」との批判もあるが、政府方針には明確な理由がある。
◆停止の副作用重く
規制委が高浜原発の新規制基準への適合を認めた2月12日。施政方針演説に臨んだ安倍晋三首相は、「低廉で安定した電力供給は日本経済の生命線であり、責任あるエネルギー政策を進める。原子力規制委が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し、再稼働を進める」と言い切った。
理由は、大きく区分けして、安全保障、経済、地球温暖化対策の3つだ。日本は東日本大震災前まで、国内で必要な電気の約3割を原子力でまかなっていた。火力発電の燃料となるLNG(液化天然ガス)や石油、石炭が国内にほとんどないため、中東など海外から高い値段で購入するしかなく、政治情勢次第では調達すらできなくなる危険に備えるためだ。しかし、原発停止によって燃料を海外に依存する火力発電が9割となっている現状では、エネルギーを国内で調達する自給率が震災前の19.9%から2012年には主要国で最も低い6.3%に急落。いざというときに国の主権や国民の安全を守る国家安全保障に問題が出てくる可能性があるとみている。