そうした“予言者”としての実績を背景に、新しい“予言”として塚本教授は、冷暖房を服の方で制御するようになって、部屋の冷暖房装置がなくなる可能性、個々人がICタグを体に仕込んだり、超小型の胃カメラを気軽にのみ込んだりできるインプラント時代の到来を指摘。電脳化もそれほど遠くはないことを示唆した。
マインドアップロードという、人間の記憶や感情などをまるごと電子情報にして移し替えるような技術も、25年後には可能になって、人間は永遠の生命を手に入れると話した。肉体を持った“私”と電子化された“私”との連続性が気にかかるが、これについては、少しずつ電子に移行していくことで気にならなくなるといった持論を聞かせた。
遠からず起こるだろう技術革新について話していった塚本教授は、最後にシンギュラリティと呼ばれる、人工知能が人類の知性を追い越す現象が起こり、やがて人類に牙をむくといった将来像に関して触れた。
コンピューターの反乱といったビジョンではなく、「科学技術の発展曲線が特異点となる日」をシンギュラリティと位置づけた塚本教授。「超知能が人類の知能をはるかに追い越すということ。超越するのは人工知能ではなく人類自身という可能性も含めたい」と指摘し、ウェアラブルや、その延長にあるインプラント、ナノマシンを使った知性の向上などを経た人類が、超知能を得てシンギュラリティに至るビジョンを示してみせた。