しかし、それらはすべて妄言だった。
実際は京大生でもなければ、博士号もない。工業高校を卒業してから、京大の研究室で一時期学んだ経験があるだけだった。また、あくまで子会社の派遣社員であり、住電の正社員でもない。
民事訴訟の訴状によると、男は派遣社員になる前に在籍していた電機メーカーで、約50の特許技術を開発したとも豪語していた。しかし、メーカーから支払われている特許料は年3万円前後。50という数はどう考えても多すぎる。
こうした一連の“経歴詐称”に対し、男側は訴訟で次のように反論した。
「京大で研究していたとは言ったが、京大卒といううそは付いていない」
男によれば、前職のメーカー時代に業務エアコンを開発し、イタリアで2500台受注した実績もあるのだという。
「(前職では)同僚から『博士』と呼ばれていた。空調に精通しているという自意識から名刺に記載することに抵抗感がなかった」