
個人通算50勝目を逃し引き揚げる高梨沙羅=21日、山形市クラレ蔵王シャンツェ【拡大】
◆逆境に打ち勝つ強さ
「世界の頂点を目指すアスリートに大人も子供もないと言いたいですが、このシチュエーションだけは違います。大人なら、うまくスルーできる。逆境に打ち勝つ強さを身につけていますから」
ロサンゼルス大会のとき、長崎さんは泣きやむことができず、やっと絞り出した言葉は「ごめんなさい」だった。
「私はこのまま生きていていいですか、競技を続けてもいいですか、再びがっかりさせるかもしれませんよ-。そういう思いでした」
結果に向き合うのは高梨自身のみだが、温かく見守ってくれる人々がいるから、けして孤独ではないという。
「4位を乗り越えるには、次のオリンピックでメダリストになる以外に道はありません。もし、彼女に言葉をかけるとしたら『大丈夫だから』かな。そして、強く、しっかり抱き締めてあげたい」
2月にはラハティ(フィンランド)で世界選手権が開催され、その1年後には韓国・平昌五輪である。
五輪メダリストは語り継がれ、あと一歩、わずかの差でも4位に甘んじた選手は忘れられていく。もちろん、メダル至上主義に陥ってはならないが、厳しい現実がある。
「今度こそ」と、高梨には再び金メダルが期待される。ジャンプという種目は実力があっても、その時の天候に左右され、4年間の努力が一瞬で消えてしまうケースさえある。
日本のエースは平昌の風を味方につけられるだろうか。(津田俊樹)