
クリスパーの役割【拡大】
石野氏は、放射性リン酸塩を使って「G」「A」「T」「C」という塩基配列を読み取った。
地道な作業だった。暗室でフィルムを現像液に浸し、1つずつ配列を確認する。不鮮明な画像に手を焼いた。石野氏が配列を読み上げ、中田氏がコンピューターに打ち込む。2人並んで机の前に座り、熱中した。
「1日15時間閉じこもっても、読めるのは300~350くらい。今は蛍光による自動装置で、結果をコンピューターのディスプレーに表示できますが、当時は全て手作業でした」
DNAのある部分に「CGGTTTA…」という配列が、規則正しく繰り返されていることに気付いた。同じ配列は5回、繰り返されていた。
「あまりにもきれいに並んでいる。何か意味があるんだろう」
直感した。だが、生命活動に何の意味があるかは、分からなかった。
昭和62(1987)年、中田氏ら研究チームのメンバーと、酵素「IAP」に関する論文を発表し、繰り返し配列のことも記した。石野氏はその後、米エール大に赴任し、別の研究に没頭した。奇妙な配列のことは忘れた。