【田原】大学を卒業後は?
【武地】人の心を動かす仕事をしてみたくて、就職活動では広告業界を志望しましたが、結局すべて落ちてしまいました。最終的に入社したのは、スマホのアプリをつくっている会社です。そこでゲームアプリの企画をしたり、サービスの設計や営業の仕事も経験させてもらいました。
【田原】その会社は2年でお辞めになる。どうしてですか。
【武地】僕はデザインならできるけど、コーディングができません。企画するのに自分ではつくれないことにもやもやする思いがあって、会社を辞めて勉強することにしました。参考書を買って独学で半年、家に引きこもって勉強していました。結局、プロのプログラマーとして活躍できるほどのスキルは身につかなかったですが、エンジニアの世界を垣間見るくらいのことはできたと思います。
【田原】それから?
【武地】ほかのスタートアップでアルバイトをしながら、仲間とIoTのガジェットをつくりました。それを商品化して販売するために2014年に会社を立ち上げました。
恋人にスリッパを履かせるかで大激論
【田原】IoTのガジェット?
【武地】スマートフォンにつける鳥型のガジェットです。事前にアプリへ自分の趣味などを登録しておき、同じ趣味の人が近くに来るとそのガジェットが光って教えてくれます。
【田原】開業資金はどうしたんですか。
【武地】自己資金に加えてクラウドファンディングで資金を募りました。会社を立ち上げるときに60万円、もう1回40万円で、計100万円です。
【田原】で、売れましたか?
【武地】いや、まったく(笑)。でも、結果的によかったのかもしれません。失敗したので、次はどうせなら夢のあるチャレンジをしようと考え、会社のスローガンを「クレイジー・メーカー」に変更。超クレイジーなものをつくってみたくて、好きなキャラクターと一緒に暮らせる「Gatebox」の開発を始めました。
【田原】これ、つくるのは簡単じゃないですよね?
【武地】ハードウエアだけでも難しいのですが、制御するソフトウエアに苦労しました。さらに大変だったのはモデルの制作です。ただの絵ではなく3Dで動かすので、開発にはかなりのお金と時間がかかりました。
【田原】武地さんはつくる技術を持っていらしたんですか。
【武地】いや、何もないです。最初にあったのは、キャラクターと一緒に暮らしたいというビジョンだけ。それを突き詰めて投資家さんから資金を調達したり、つくれる仲間を集めたりました。
【田原】ビジョンに賛同して集まってくれた仲間も、おそらくキャラクター好きな人たちですよね。こだわりが強すぎてモメませんでしたか?
【武地】モメます、モメます。オリジナルで「逢妻ヒカリ」というキャラクターをつくったのですが、スリッパを履かせるかどうかでメンバー3人の意見が割れて、深夜の日高屋で5時間激論しました。僕は「家のなかでスリッパは履かない」派でしたが、ほかの2人は「履いたほうがかわいい!」。最終的に押し切られて、エプロン姿のときは履くことになりました(笑)。