東電に「津波対策不可避」 試算担当者が証言 強制起訴公判

元東京電力会長の勝俣恒久被告(福島範和撮影)
元東京電力会長の勝俣恒久被告(福島範和撮影)【拡大】

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された同社元会長、勝俣恒久被告(78)ら旧経営陣3被告の第6回公判が11日、東京地裁(永渕健一裁判長で開かれた。10日の公判に続いて出廷した津波の試算を担当した東電社員が、「津波対策は不可避」とする資料を平成20年9月の社内説明会向けに作成したと証言した。

 社員は10日の証人尋問で、政府の地震予測「長期評価」に基づき津波対策を検討していたが、同年7月に元副社長、武藤栄被告(67)から対策を保留にする方針を伝えられたと説明していた。

 11日の証言によると、社員はその後も「長期評価を否定するのは難しい」として対策を検討。9月の社内説明会用の資料で「対策は不可避」としたほか、横断的に津波対策を議論するワーキング会議を設置するよう21年夏から上司に進言するなどしていたという。

 事故4日前の23年3月7日、社員が原子力保安院のヒアリング中、10メートル以上の津波が原発に到達するとの試算を伝えたところ「指導もあり得る」との発言を受けたため、同日中に武藤被告らにメールで報告。武藤被告から返信はないまま事故が起こり、社員は「ショックを受けた」と話した。