
販売開始とともに展示会や講演会で無公害工事への啓発に力を入れた【拡大】
とはいえ、騒音と振動という建設公害に悩む「建設業界の救世主」のサイレントパイラーは、引く手あまたのヒット商品だった。52年夏に1号機を大阪に納入して以降の3カ月間で静岡、広島、福岡へと納入先がまたたくまに広がった。
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販売網が広がると同時に、北村はサイレントパイラーを使う「圧入工法」の講習会を各地で開くなどして普及に力を入れた。
実は、サイレントパイラーが現場デビューを果たす前、大阪で開催された「国際環境汚染防止展」に開発2号機を出展したことがある。このとき、見学者らはなじみのない「圧入原理」、初めて目にする工法に戸惑うばかりであったという。
北村が販売開始後に全国を回り始めたときも、各地の講演会では「杭打ち機が本当に無振動、無騒音になるのか」と開会前には疑心暗鬼が会場に満ちたが、講演後にはどこの会場でも拍手がわき起こった。
東京で開いた展示会で、北村にとって忘れられない出来事があった。誰もいない夜の会場でサイントパイラーのエンジン音を測定してみたところ、「浜風より小さい数字だった」。北村は開発の苦労をともにした垣内と男2人、手を取り合って喜んだ。
=敬称略
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首都直下、南海トラフの地震や多発する水害の危機が迫る中、独創的な工法が注目を集める「技研製作所」は創業50年を迎えた昨年、東証1部上場を果たした。この連載では、北村精男が一代で興した同社が、世界企業として発展してきた半世紀を追う。