
福島浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業の下で設置された5メガワットの「ふくしま浜風」【拡大】
風力発電に関する政府の審議会の委員長を歴任する足利大学の牛山泉理事長・特任教授に、洋上風力の世界情勢をうかがいました。
「欧州の海域は遠浅で安定的に強い風が吹きますので、着床式の洋上風力が大規模導入されています。政府主導で開発可能海域のゾーニングや入札制度導入を進め、買取価格が短期間で急速に下がりました。技術面でも、風車の超大型化が進んで建設台数が削減され、運転保守コストの削減に貢献しています。現在は7~8メガワット機が主流ですが、風車メーカー各社は10メガワット超級の洋上風車の開発を進めています。先日も米GEが21年の市場導入を目指し、12メガワット風車(ローターの直径220メートル、ブレードの長さ107メートル)の開発を発表しています」
「欧州では、洋上風力の建設現場近傍の港湾で風車などの組み立てや関連機器の保管・積み出しを行うなど、コストがかかる洋上での据え付け工事の最小化と建設期間の短縮化を進めています。洋上風力が主力電源の地位を築きつつある欧州と比べると、日本は大きく遅れている状況です。しかし、日本には風車メーカーとして日立製作所や、ヴェスタス(デンマーク)と組む三菱重工業があり、独自の技術力を生かせる場が広がる可能性があります。海洋大国の英国が洋上風車で輝きを取り戻したように、排他的経済水域が世界6位の日本は大きな可能性を秘めています」
普及への課題と展望は?
本格普及に向けた日本の課題と展望について、牛山氏にうかがいました。「日本では秋田や青森、茨城・鹿島港沖、千葉・銚子沖、北九州などの海域で安定的に強い風が吹き、洋上風力の導入が期待できると思います。ただ、港湾を拠点港として整備する必要があり、巨大クレーン設置のための地耐力強化など、コストがかかります」