ニュースを疑え

「いい言葉を流行らしてくれた」 フェイクニュース、養老孟司氏に聞く (2/5ページ)

 「もうひとつ。終戦の年の秋に教科書に墨を塗った。これは効きました。新聞を含め印刷されたものは信用してはいけないと、いつ百八十度変わるかわからないと強く思わされた」

 --フェイクニュースから、戦中戦後の話になるとは思いませんでした

 「結局それが世間とのつきあい方、生き方自体を決めることになったのですから。幼いときに父が亡くなったのと並んで大きな出来事でした。大人たちがやっていたこと、あれはウソだった、だまされたと思ったのです。医学部に入って解剖を選んだのは、死んだ人はウソをつかないからです。解剖の途中で帰って次の日に来ても、きのう終わった状態でいる。僕は患者さんを診られない。生きている人はどこでウソついているかわからない。痛いって言うけど、ホントに痛いのかよって思ったりする」

 公平客観中立はウソ

 「トランプ大統領はいい言葉をはやらしてくれたと思いましたよ。ニュースは基本的にそう見るべきだと思っていますから。NHKは公平客観中立なんて、ウソつけって思う。だからNHKがこういう事件についてこういうふうに言っていたと、受け止めるんです」

 --子供のころの経験が強烈にあるからですね

 「ニュースはすべてフェイクだと思っているくらいが安全です。それで初めて自分の頭で考えることになるでしょう。オレオレ詐欺とフェイクニュースは似ています。都営住宅に張り紙で『電話はすべて詐欺』と書いてあるのを見たことがある。ああこういう時代になったのかと、民衆的にはフェイクが当たり前になっている。以前から思っていたことですが、フェイクニュースという言葉ができたために伝えやすくなった」

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