ニュースを疑え

「いい言葉を流行らしてくれた」 フェイクニュース、養老孟司氏に聞く (3/5ページ)

  --フェイクニュースに対抗し、ウソか本当か事実を調べるファクトチェックという活動もあります

 「そんなヒマよくあるね。事実には際限がない。一生かかっちゃいますよ。むしろいま気をつけなきゃいけないのは情報に頼りすぎることです。医者が典型。患者を見ないで検査結果ばかり見ている。若いお医者さんは顔を見てくれないし手も触ってくれないとお年寄りは言う」

 「銀行で本人確認手続きというのがあります。運転免許も健康保険証もないと言うと、『困りました。本人だとわかっているのですが』って。冗談のような本当の話です。いったい本人って何ですか。それを表現する言葉があるとするならノイズです。銀行が必要としているのは本人確認の書類、つまり情報であって、私自身はノイズなのです」

 --本人そのものより情報が優先されるのですね

 「システムをつくればそうなる。統計にのらない部分は切り捨てられる。それもどんどんゼロ・イチになりますよ。こっちか、あっちか。だから国民投票がはやる。EU離脱も是か非か。人間が情報になると現物がいらなくなる。情報化社会が持つ根本的な矛盾でしょ。人は生身で生きているのに社会全体がノイズを消していっている。感覚が入り込んでこない」

 いい教科書にはだまされる

 「相模原市の知的障害者施設で2年前に起きた19人殺害事件で、犯人は何と言いました。生まれたときから介護を受けて働くこともできない人の人生に意味があるのかと。彼はすべてのものに意味ある情報がなければいけないと思っている。とんでもない人が出てきたと思いました」

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