--欧米と日本でフェイクニュースの受け止め方は違うでしょうか
「欧米人は唯一客観的なものがあると信じられる人たちだと思う。公平客観中立とはキリスト教やユダヤ教、イスラム教のような一神教的な考え方。徹底的に事実を追求する姿勢は、人ではなく神がそれを保証しているからです」
「私は根本が仏教ですから、いくら追求してもわからないものはわからないと思っている。芥川龍之介の小説『藪の中』や黒澤明の映画『羅生門』が典型。ひとつのことで登場人物がそれぞれ違う説明をし、そのまま終わっている。科学的に証明された事実などと言いますが、そんな言い方もフェイクだと思う。ひとつの説でしかないのです」
--ネットにはフェイクニュースが蔓延していると言われる。この状況はどうなっていくと思いますか
「動物行動学の教科書にこんなことが書いてある。全員が正直者の社会で突然変異が起き、嘘つきが発生した。正直者はみなオレオレ詐欺にひっかかるから当面は嘘つきが大もうけするが、やがて嘘つきを追及する者も出てきて両者は適当なバランスで収まると」
「みなさんも本当のことばかりではなくウソも言っているでしょ。それがバランス。すべてのニュースをフェイクだと思えというのは極端な言い方だが、考え方です。疑いの余地を置いておけということです」