濃度70%以上のエタノール
塩盛教授に話をうかがいました。
「焼酎廃液からエタノールを抽出する技術は従来ありましたが、重量のわずか1%程度しか含まれておらず、効率の悪いものでした。大学の実験室で入念な検証実験を行い、焼酎廃液と芋くずなどのデンプン質を混ぜ合わせ、焼酎廃液に含まれる酵母や酵素の働きで発酵させると5~10%程度のエタノールを生成できることが分かりました。これを蒸留装置にかけ、1回の蒸留で濃度70%以上のエタノールを抽出することに成功しました」
焼酎廃液の酵母は、通常55度でほぼ死滅します。しかし、焼酎の蒸留工程に、減圧蒸留(圧力を下げて沸点を下げ、低い温度で速やかに蒸留する手法)を採用し、60度前後で低温沸騰させると、焼酎廃液の酵母が生きていて、糖化酵素も活性を保っていることが確認されました。そのため、エタノールの抽出には減圧蒸留から発生した焼酎廃液を使っています。
「濃度70%以上のエタノールを燃焼させるボイラーは市販されており、発電用燃料として利用できます。エタノールを抽出した後の残渣(ざんさ)は、乾燥させると固形バイオ燃料になります」(塩盛教授)
宮崎大木花キャンパスの敷地内に17年10月下旬、焼酎廃液から燃料用エタノールを製造するプラントが完成し、稼働を始めました。1回当たり約50キログラムの廃液と芋くずを処理し、最大8キログラムの70%エタノール燃料と30キログラムの固形燃料を生成することができます。プラントの建設費は、あなぶきグループが寄付しました。