引っ越し業者の「家事支援」サービス、共働きや高齢者世帯に人気
引っ越し時の家具の移動や荷物の整理収納のノウハウを生かした引っ越し業者による家事支援サービスが登場している。高齢化や女性の社会進出が進む中、共働きや単身者世帯を中心に人気を集めている。どのようなサービスなのか調べてみた。(村島有紀)
布団丸洗いも
10月からサービスを開始したのは引っ越し業、ヤマトホームコンビニエンス(東京都中央区)の「快適生活サポートサービス」だ。担当者と相談しながら、整理収納からエアコンの高圧洗浄などの専門清掃、布団の丸洗いクリーニングまでを幅広く請け負う。
費用は、エアコンクリーニング(45分~、9180円~)▽冷蔵庫内・裏側の清掃(50分、9720円)▽布団丸洗いクリーニング(1枚7344円~)▽大型家具の移動(6480円)▽押し入れの片付け(1万7280円)など。
会員になると各千円引き、複数サービスの併用で各500円引き、利用回数が増えると最大30%引きになる。
同社は、2年前から重くて1人では運べない家具の移動や整理収納、不用品の買い取りなど引っ越し作業のノウハウを生かしたサービス「らくらくおかたづけパック」を開始。新たなサービスでは、クローゼットや押し入れなど、場所ごとの個別のサービスに広げた。
同社の工藤陽介オペレーション戦略部長(38)は「引っ越しは年度末や月末、週末に集中しており、閑散期に収益をあげようというアイデア。引っ越しの場合、お客さまとの接点が一度きりになることが多いが、家事支援サービスを通じて日常的な接点を増やせれば」と意気込む。
日常メンテナンスへ
引っ越しを機に日常的な家のメンテナンスを担おうという動きもある。
引っ越し業、SGムービング(東京都江東区)は、昨秋から「整理収納アドバイザー」というサービスを導入。家事支援サービス業界でつくるハウスキーピング協会(渋谷区)の整理収納資格を持つアドバイザーが、引っ越し後の新居での家具の配置や収納方法をアドバイス。「いつでもきれいな部屋」のメンテナンスをサポートする。
価格は1時間当たり2300円(4時間以上)。同社は現在16人いる整理収納アドバイザーを年度内に40~50人に増やす計画だ。
また、来月には炊事、洗濯、掃除、買い物なども担う家事代行サービスもスタートさせる。料金は、初回のお試しサービス5500円(実働90分)、その後は3時間利用で1万2500円程度を想定している。
同社の浅野一浩営業開発課長(50)は「引っ越し作業を行うと、その家の家具の配置や汚れやすい場所などを把握できる。逆に利用者は新たな家事支援業者を探す手間も省ける。引っ越しを機に定期利用に結びつけられれば」と期待を込める。
経済産業省によると、家事支援サービスは、中小零細企業が多く市場規模の把握が難しいが、共働きや高齢者世帯の増加により利用が広がりつつあるという。
平成7年に部屋の整理収納を手掛ける「アートエプロンサービス」を始め、昨年8千件以上を受注したアート引越センター(大阪府大東市)によると、利用者の多くは高齢者や小さな子供のいる家庭、急な転勤などで時間がない単身世帯など。時期的には、年末や季節の変わり目に利用する人が多い。
家事の外注は便利な一方、価格は決して安くはない。3LDKのわが家の場合、キッチンや風呂場、換気扇、6カ所の窓、4台のエアコンの専門清掃、照明と床や壁の清掃やクローゼットの片付けなど、年末の大掃除をすべて頼むと20万円近くかかりそう。どうするかは悩ましい問題だ。
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