改めて注目「確定拠出年金」 老後に向けて自助努力、商品選ぶ訓練を
自分の運用次第で将来に受け取る年金額が変わる確定拠出年金が、改めて注目されている。厚生労働省が制度の見直しに着手したためだ。年金給付水準の中長期的な低下が見込まれる中、年金だけで足りない分を個人で準備してもらう狙いがある。(寺田理恵)
理解できない
確定拠出年金は、毎月積み立てる掛け金を個人が自分の判断で運用する制度。企業が従業員の掛け金を出す企業型と、勤め先に企業年金のない人が自分で掛け金を出し、証券会社や銀行などを通じて加入する個人型がある。
東京都文京区の会社員、永田由香さん(34)=仮名=は10月、証券会社を通じて個人型に加入した。
「職場の先輩に『私たちの世代は年金が減るから』と勧められました。現金があると使ってしまう。ためたお金を下ろせない仕組みになっている点がいい」
加入者が拠出した掛け金は非課税扱いで、全額所得控除が受けられる(企業型で事業主が拠出した掛け金も非課税扱い)。そこで、節税効果を期待し、限度額いっぱいの月2万3千円を積み立てることにした。
証券会社が用意した運用対象商品には元本確保型の定期預金や年金保険のほか、投資家から集めたお金をプロが運用する元本変動型の投資信託(投信)がいくつもラインアップされているが、永田さんは全額を定期預金にした。
「投信で増やしたいと思うけど、証券会社からもらった商品資料を読んでもよく分からない。理解できないまま損をしたくない」
冷蔵庫を開けて
一方、横浜市の会社員、田辺佳子さん(47)=仮名=は定期預金のほか外国株式、外国債券にそれぞれ投資する2つの投信にも配分して積み立てている。家族が日本株を保有しているので、投資先を分散させるため海外中心に選んだ。
「自分で外国株を買うよりリスクが低いし、たまに残高を確認するだけで特に勉強も要らない。このところの円安で好調です。非課税扱いのメリットも大きい」
確定拠出年金は運用実績を上げれば年金額を増やせる仕組みだが、永田さんのように利回りが低くても安全な商品を選ぶ人が少なくない。厚労省によると、運用商品の構成は約6割が元本確保型の預貯金や保険に集中。しかし、元本が安全でも、物価が上昇すると資金の実質的な価値が下がる可能性も指摘されている。
高齢化の進展で将来的に年金の目減りが見込まれる中、厚労省はより多くの人に確定拠出年金の制度を利用してもらおうと見直しに着手した。これまで対象外だったサラリーマンの妻(第3号被保険者)や公務員の加入を認めたり、運用対象の商品数を絞って選びやすくする案を社会保障審議会の部会に示した。老後に向けて年金を補う自助努力が期待されている。
「確定拠出年金は老後資金をつくる王道。運用商品が数多い投信の中からある程度絞ってそろえられているので、いわば料理しやすい食材が入った冷蔵庫」とするのは、ファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんだ。簡単な資料の見方を覚えれば、初心者でも読み取れるという。「極端に高いリスクはないうえ、商品の資料は同じ形式で用意され比べやすい。大事なのは自分で選ぶ訓練をすること」と話している。
■進まない個人型の普及
日本の年金制度は3階建てになっており、1階部分が国民共通の基礎年金。2階部分は、企業の従業員が加入する厚生年金と公務員の共済年金に分かれている。厚生年金に上乗せされる企業年金や確定拠出年金は3階部分に当たる。
厚生労働省によると、企業年金が非正規雇用の従業員に適用されなかったり、勤務先に企業年金がなかったりして、厚生年金加入者の6割が企業年金に加入していない。個人型確定拠出年金に加入できる人は推計約4000万人だが、加入者数は約18万3000人にとどまっている。
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