現代の若者文化つくった「団塊世代」 今後も流行の火付け役に
【団塊男子 青春よ再び】(1)
万年筆に革小物、葉巻、シングルモルトのウイスキー。伊勢丹新宿本店メンズ館(東京都新宿区)の一角に、大人の男性がこだわる趣味の世界が広がる。「サロン・ド・シマジ」は、雑誌『週刊プレイボーイ』の元編集長、島地勝彦さん(73)がプロデュースするセレクトショップだ。
「われを忘れて遊べばよい。それが人生を豊かにする。年齢不詳になることが必要だ」。島地さんがショップに併設のバーで客を迎える日は、指南を受けたい男性が全国から集まる。
同誌は『平凡パンチ』とともに従来にない若者向けの雑誌として「団塊の世代」の青春期に若者文化をリードした。売り物はヌードグラビアに限らず、服や車など消費への関心も刺激した。島地さんは文豪の開高健を口説き、人生相談の回答者に据えた。
「遊びの中に真実がある。人生にそんなに悩まなくていいと訴えたかった」
権威ある芥川賞作家が、性愛など通俗的な相談に軽妙な文章とユーモアで返す欄は団塊を夢中にさせた。
流行の火付け役
人口の1割を占める団塊が、時間とお金をどう使うか注目を集めている。特に職場を離れ、年金生活に入った男性が医療や介護、消費など幅広い影響を社会に与えるためだ。かつて高度経済成長と人数の多さを背景に若者文化をつくった彼らが、新たな生き方を創造する可能性もある。
青春期の団塊は、米国からなだれ込む新たな価値観や文化を親世代に反発しながら支持してきた。Tシャツにジーンズ、長髪、ロックやフォーク。その影響は今も続く。
現代の若者に支持されるセレクトショップ「ユナイテッドアローズ」を創業した重松理氏や「ユニクロ」の柳井正氏らはこの世代だ。
若い世代に波及
団塊が再び文化を主導する可能性を指摘するのは、博報堂「新しい大人文化研究所」所長の阪本節郎さんだ。「団塊は、現代に通じる若者文化をつくってきた。今後はシニアが流行の火付け役となり、若い世代に波及するケースが増える」と予測する。
団塊が60歳定年を迎える前の平成16年に博報堂が団塊男性とその妻を対象に実施した意識調査によると、夫の85%が「定年が楽しみ」だと考えていた。かつてシニアは「人生の下り坂」と捉えられ、家庭や社会の脇役だった。しかし、阪本さんは「彼らの憧れだった俳優の高倉健さんは、『おじいさん』にならず健さんとして亡くなった。年齢を重ねながら自分らしさを磨いていく時代だ」と話す。
昭和22~24年に生まれた団塊の全員が今年から、65歳以上の高齢者。女性は専業主婦が多く、子育てを終えて趣味や旅行を楽しんでいるが、サラリーマンが多かった男性の生き方が問われるのはこれから。再び自由な時間を手にした「団塊男子」の動向をリポートする。
【用語解説】団塊の世代
一般に昭和22~24年の第1次ベビーブームに生まれた世代を指す。作家の堺屋太一氏が命名した。団塊とは、かたまりを意味し、他の世代と比べ人数が多いことから呼ばれる。26年まで広くとらえると、その数は約1000万人。平成19年に60歳に達し、大量退職による労働力不足などが起きる「2007年問題」が懸念された。だが、多くの企業が基礎年金の支給開始年齢である65歳をめどに雇用を継続、19年以降も働く人が多かった。
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