高齢化の団地、大学生が住みこみ活性化 パソコン教室など住民と交流

 
明石舞子団地では大学院生の尾崎斉人さん(中央)がパソコン教室の講師を務める。「分かりやすい」と住民に人気だ=神戸市

 大規模住宅団地で、住民の高齢化や居住者の減少が課題となっている。そうした中、大学生が団地に住みながら、地域コミュニティーの活性化に一役買う取り組みが全国的に広がっている。住民側にメリットがあるだけでなく、学生にとっても貴重な社会経験を積む場となっている。(横山由紀子、村島有紀)

 ルームシェア

 東京西部の多摩市や八王子市などに広がる多摩ニュータウンは昭和40年に開発が始まった。多摩市によると、市内の多摩ニュータウンには4万5千世帯が住み高齢化率は27・49%。団塊世代が多く、今後毎年1ポイントずつ高齢化が進むと予測されている。

 今年3月、都市再生機構(UR)の賃貸住宅の一室に、多摩大(多摩市)経営情報学部の学生3人が入居した。部屋は同大が借り上げた3DKのルームシェア型学生寮。個室は鍵付きで、ダイニングキッチンなどを共同で使う。入寮条件は地域活動への参加。家具・家電製品は大学側が用意し、学生は1人月額3万5千円を負担する。学生たちは児童館で子供たちと交流したり、高齢者には困難な高所作業を担ったりと地域の一員として協力する。

 多摩ニュータウンの再生を目指す同市とUR、同大の3者が連携して実現。同大の奥山雅之准教授(地域経済学)は「現在は1室だが将来は10室30人まで定員を増やしたい。特産品の開発や地域活性化のアイデアを得られれば」と期待する。

 都内の大規模団地に学生が住み込む取り組みは、大東文化大(板橋区)が、URの大規模団地、高島平団地(同)で、平成20年度から実施したプロジェクトが先駆け。現在も住民と学生による「学びあい教室」などを運営する。

 公営住宅を活用

 関西では公営住宅を活用する動きもある。京都市伏見区の市営住宅、醍醐中山団地には、京都橘大(同市山科区)の学生9人が暮らす。

 昭和51年に完成した同団地は、住民約1300人のうち40%が65歳以上の高齢者。全戸のうち15%以上が空き状態で、活性化を目指す京都市が同大に働きかけた。大学側は2世帯用住宅8戸を無償で借り受け学生用に改修。学生の利用料は1人月1万5千円と低く抑え、地域活動への参加を居住条件に募集した。

 看護学部2年の橋元美希さん(20)は「団地には高齢者の方が多く、いろいろな話が聞けるので勉強にもなる」。同団地町内連合会の足立松男さん(79)は「若い感性で、団地の活気を取り戻してほしい」と話す。

 公営住宅に学生が居住する取り組みには、先例がある。神戸市垂水区と兵庫県明石市に広がる明石舞子団地。県営住宅やURなどの公共賃貸住宅、一戸建て住宅などが並ぶニュータウンだが、昭和50年の約3万7千人をピークに居住者の減少が続き、平成22年は約2万1千人。65歳以上が約36%を占める。そこで兵庫県は、県営住宅を23年度から自治会活動などへの参加を条件に学生に提供。現在、8人の学生が暮らす。

 入居3年目の兵庫県立大大学院2年の尾崎斉人さん(25)は毎週土曜、団地内の交流拠点「明舞まちなかラボ」で無料のパソコン教室を開く。住民の徳田かず子さん(63)は「どんなことでも気軽に聞けるので助かっています」と喜ぶ。尾崎さんは「世代を超えて交流でき毎日が充実しています」。

 同大政策科学研究所所長の加藤恵正教授(経済学)は、「団地は数十年後の日本社会の縮図。その意識を持って生活し、地域活動に取り組むことは、学生にとって大きな学び。地域に新たな息吹をもたらす意義も大きい」としている。