相続対策、生前に話し合いを 目先の節税や不動産は家族がもめる原因に

 
相続の事前準備流れ

 ■不動産が「負の遺産」にも

 今年から相続税の基礎控除が引き下げられ、相続税対策に関心を持つ人が増えている。ただ、目先の節税や不動産の相続にとらわれ過ぎると家族がもめる原因になることもある。介護や終末期医療など相続の前後に起きやすい問題も含め、生前から家族で話し合い、意思統一しておくことが大切だ。(兼松康)

 2次相続まで見据え

 「相続税対策のセミナーでは、初歩的な質問をする人が減り、詳しい人が多くなった」と話すのは、野村信託銀行資産承継サービス部の水谷督部長だ。ただ、「節税対策にとらわれ過ぎると、家族でもめる原因になり、本来の遺産相続の考え方から外れてしまうこともある」と水谷部長は指摘する。

 例えば、夫が先に亡くなり、その遺産を妻と子供らが受け継ぐ「1次相続」と、その後、妻が亡くなり、子供らが相続する「2次相続」。

 配偶者である妻が相続する場合は、取得した財産が「法定相続分相当額以下」または「1億6千万円以下」のどちらか多い方までなら、相続税がかからない「配偶者の税額軽減」がある。

 子供らが受け継ぐ2次相続では「配偶者の税額軽減」は当然ない。例えば、1億8千万円の遺産のうち、妻が税額軽減特例を利用して1億6千万円、1人の子供が2千万円を相続した場合、1次相続では妻には相続税はかからず、子供の相続税は304万円。だが、2次相続で子供が1億6千万円を相続すると、3260万円も相続税がかかる。

 2次相続までを見据え、1次相続の際に妻と子供が9千万円ずつを相続しておけば、子供が払う税額は1次相続時に1370万円かかるが、2次相続では920万円に抑えられ、結果的に1200万円以上の節税になる。

 しかし、2次相続対策を優先し、1次相続で子供の取り分を多くすると、妻の生活費や医療・介護費など老後資金が足りなくなってしまうことも。そうした状態に陥っても、子供が親の面倒を見ないケースも少なくないという。

 遊休地にマンション

 最近は相続対象となる遊休地にマンションやアパートを建てて相続するケースも多い。遊休地のままにしておくのに比べ、マンションなどを建てると、固定資産の相続税評価額が6分の1前後となり、その分、相続税も軽減されるからだ。

 だが、資金を借り入れ、無理して建設した結果、「借入金返済などが負の遺産となってしまう例は実際に多い」という。賃借人の確保や将来的なリフォームにかかる費用をカバーできるかなど、前もって試算しておくことが大事だ。

 また、不動産は財産としては分けづらい実物資産。複数の子供で共有すると、売却や改修などの際にトラブルの種になることもありうるという。

 家族の入院や急死など相続の前後にはさまざまな問題が発生する。遺産の分割のほか、介護や終末期の延命治療、葬儀、遺品の整理、預金口座の名義変更など想定以上に手間や時間がかかったり、難しい判断を迫られたりすることは少なくない。

 残された家族がそうした問題に振り回されないようにするには、「家族のそれぞれが納得する形で事前に話し合いをしておくことが重要」と水谷部長は強調する。

 相続前後の適切な準備として大事なことは、(1)遺産や延命治療などについての本人の意向の整理(2)家族での情報共有(3)葬儀の生前契約や遺言の作成など適切な準備(4)専門家のサポートによる故人の遺志実現(5)残された家族のサポート-の流れだ。

 こうした話し合いを持ついい機会が、遠方にいる家族も含め親族が一堂に会するお盆の時期。「最近ではネット銀行の口座など本人にしか分からないことも多い」と水谷部長。「人生の区切りに自分の希望を伝えるエンディングノートを作り、それをきっかけに話し合いの場が持てるといい」と話している。